次世代シーケンスの技術が発展することで、目的に応じたゲノム解析が可能となりました。また、その上でゲノム解析の手法を正しく選択することで、時間やコストを削減することが可能です。
これには全ゲノム配列を解析して遺伝子情報を充実させる方法と、疾患などに関連した領域に絞り、少ない工数で精密なデータを入手するターゲットシーケンスといった手法があります。ここでは、全ゲノムシーケンスとターゲットシーケンスの違いについて詳しく解析していきます。
次世代シーケンサー、特に大型の機種を用いれば、ヒトのようにサイズが大きな生物であっても解析に困らない十分なデータを得ることができます。また、多くの検体に対してまとめてシーケンスを行うことで、1検体あたりのコストを抑えられるのもメリットです。
しかし、一方で大規模な解析では多数の変異が検出されるのが一般的で、その分コストが大きくなりがちな面も。ヒトや研究対象として用いられることが多いマウスのゲノムサイズは約33億塩基対と言われており、解析ではその20倍から30倍のデータ量が求められます。その中から重要な変異を見つけ出すのは非常に困難です。
では、ゲノムサイズが大きな高等生物の変異を総合的に解析するのは不可能なのか?というと、決してそうではありません。それを比較的容易にしたのが「ターゲット解析」です。これは特定の領域のみをターゲットにしたゲノム解析で、対して総合的な解析を行う方法は「全ゲノム解析」と呼ばれます。
全ゲノム解析とターゲット解析には、以下のような違いが存在します。
全ゲノム解析は、その名の通り「ターゲット全体を網羅的に解析する」手法。サンプルに含まれるすべての核酸をライブラリーにする必要があり、その調整に伴うDNAの断片化等が必要となります。より多くのデータを取得したい場合に適していますが、一方で膨大なデータ量が求められるため、解析の手間やコストがかかるという注意点もあります。
こちらは全ゲノム解析に対し、「関心のある対象、目的となる対象や領域のみを解析する」手法です。目的の領域に設定したプライマーを用い、サンプルに含まれる核酸に基づいてPCR(DNAの複製・増幅)を行ってから、得られたPCR産物にアダプターを付加することでライブラリーを調整します。全ゲノム解析では調整のために断片化が用いられるのに対し、ターゲット解析ではPCRが使われるということです。
ターゲット解析は範囲が限られますが、目的に応じた柔軟な解析ができるほか、効果的に対象を絞ればその領域に関しては全ゲノム解析よりも詳細な情報を得られる可能性があります。
このように、全ゲノム解析とターゲット解析はそれぞれにメリットとデメリットが存在します。一見ターゲット解析の方がコストや手間を考えると現実的に思えますが、高等生物以外の生物種においては全ゲノム解析が比較的容易なので、そちらの方が向いている可能性もあるでしょう。用途や目的に合わせ、適した手法を選択したいものです。
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